なんで息吹木の家なの?
私たちが目指しているのは息吹木の家
それは冒頭に申し上げたような家。
では、何でそんな家を目指しているのか?
それをご説明するためには、家創りの経緯、そして私たちが抱えた大きな矛盾点
これを理解してもらわねばなりません。
▼昔の家
「昔の家はよかった!」
こんな言葉を時々聞きます。
昔の家? 昔の家ってどんなだったのでしょうか?
基礎はコンクリートではなくて石に木の束(柱)が乗っていて、
構造材はもちろん地元の木材
中にはたたき(土を固めた土間)があって、その奥におくどさん。
おくどさんって今で言うキッチンのこと。
ちょっと高めの縁があってその奥が食事をするところ。
建具はみんなふすまか障子、壁はもちろん木舞を組んだ壁に土を付けて漆喰で仕上げてある。
なんか目に浮かぶようで懐かしいですね。
こうやって考えてみると、昔の家って“木”と“土”と“紙”で基本的にできていたんですね。
全て自然素材。 シックハウスなんて無くて当たり前ですね。
でも、もう一つ思い出すことがあります。
こんな家、夏は涼しくてよかったんですが冬は寒かった。
足は掘り炬燵へつっこんで、厚くて重い布団を肩まですっぽり掛けて寝ないと寒くて寒くて
朝方なんか、吐く息が白くなっていたのを思い出します。
そう、自然素材だらけで健康的な家は、一方では“多少の我慢がいる家”だったんです。
▼アルミサッシの登場
そんな家に救世主が現れます。
それは“アルミサッシ”
それまで外部建具といえば、木の枠にカガラスをはめ込んだものが主流。
これが古くなると、立て付けが悪くなり、あちこちからすきま風が入ってくる。
そんな建具をアルミサッシに替えると、建具の部分の気密化が図られ、驚くほど快適な環境に変わりました。
今のようにペアガラスの訳はないし、枠だって今のものに比べると“貧弱”そのもの。
でも、そんなサッシでさえ、劇的と言えるほど生活を改善したんです。
生活も“採暖”から“暖房”へ。
今までは火鉢などへあたって温もる、ということだったんですが、気密化により部屋自体を温める暖房という考え方が当たり前になりました。
しかし、同時に今まで起こりもしなかった問題も出てきました。
それは今でも私たちを悩ませる“結露”なんです。
▼最近までの家
ではその後の家はどうだったんでしょうか?
最近まで標準的に建てられ続けた家、それは高度成長期の波にの乗って次々と作られました。
要点をあげてみると
- 伝統的な工法を捨て、簡略な工法へ
- 断熱材も入っていないか、入っていたとしてもせんべい布団のように薄いもの
- 真壁工法(柱や梁が見える工法)から大壁工法(構造材を全て覆ってしまう工法)
- 自然素材を極力排除して、ビニルクロスなどの科学的なものへ。
クロスや新建材に代表されるように、成長期に建てられた家は、「早く建てる」ということが大命題でした。
それ故、加工などしなければならない、取り扱いの難しい自然素材は極力排除されました。
この時期に建てられた家、
それは断熱も中途半端、気密も中途半端、何もかも過渡期の家だったと言わざるを得ない、と思います。
そしてまた結露が始まります。
何故でしょう?
ご覧の通り、結露の条件は水分があって、温度差があることです。
温度が20度で結露しない状態のもの(図1)を、どんどん冷やして行くと、12.2度で飽和状態(図2)
さらに冷やすと結露が始まります。(図3)
簡単に考えると
水を持っているコップは、温度が高いと大きいのですが、温度が低くなると小さくなる
中の水の量だけは変わらないので、当然水は流れ出してしまう(結露する)ということなんです。
そうなると
暖房していて暖かい部屋はいいのですが、暖房していない寒い部屋にその空気が流れ込むと
先ほどの原理通りそこで結露してしまいます。
押入の中の布団がべとべとになる、とかいうことがこれにあたります。
▼高断熱・高気密住宅登場
これらのことを解決するために生まれたのが、この高断熱・高気密住宅というもの。
温度差で結露が発生するのならば、厚くて高性能な断熱材ですっぽり覆ってしまおう。
窓も結露するならば、ペアガラスの窓に替えよう。枠が結露するならば、それも樹脂製に替えよう。
こんな考え方で高断熱化することで表面的な結露は見事に押さえることができました。
でも、もう一つ深刻な問題が残っていました。
それが『内部結露』という問題
右の図を見てお分かりの通り
内装材の表面では結露しないのですが、壁の内部で結露を起こしています。
この内部結露、目に見えないだけにやっかいなもの。
少しづつ少しづつの結露水が、やがては壁の中、柱、土台を腐らせて行く原因となるのです。
この内部結露
結露の原因の項で話したとおり、水蒸気を含んだ空気がで冷や されると、やがては露点温度に達し、結露する、という自然 現象がある限り仕方がないこと、なんですが、これを解決す るために、高断熱住宅では高気密化という道をとりました。
つまり
「水蒸気を多量に含んだ暖かい空気」が暖かいところから寒 ところへ移動する過程で結露する、のであればその空気がそ こへ行かないようにすればいい。
ということなんです。
ではどうすればいいのか?
それは、断熱材と内壁の間にいわゆる堤防みたいなものを作って行かせなければいいということ。
そう、内部に結露水となる目に見えない水蒸気を入れないための堤防、それは業界では“ベーパーバリア”と呼ばれています。
この方法
理論的には実に理にかなった方法ですが、実際の施工ではきちんとバリアを
貼ることは非常に難しいため、それを嫌った人たちが
より施工が簡単な“外張り断熱”に流れていきました。
いずれにしても、湿気をシャットアウトしてしまう、ということ=高気密住宅
になっていくということ。
そして
その方法として、どうしてもベーパーバリアが必要ということなんです。
ベーパーバリアといえば、いかにも聞こえがいいのですが、
要はナイロン系のものでぐるっと囲んでしまうということなんです。
私たちは考えました。そして悩みました。
私たちの創りたい家は、自然素材に囲まれた家
でも
快適で省エネ、しかも結露の無い家を目指そうと思えば、高断熱化すること、そしてそれとセットでしなければならないこと、それが高気密化すること
それは業界の常識として、科学的な観点から、やむを得ないことでした。
結果、
その家は、目には見えないけれど、乱暴な言い方をすれば、ビニルハウスになってしまう。
それって・・・・・ 大きな矛盾点でした。
☆ご説明するための資料、図などは、住宅の断熱に関しては第一人者である南雄三先生のHPからお借りしています。