近くの山の木で家を造ろう
“近くの山の木で家を造ろう”
弊社のHPのバナーにはこの言葉がずっと書いてあります。
私は家づくりをするに当たって、そんなことは当たり前のことだと思っていました。
だから、このことについてはサブページも作らず、ずっとバナーだけのままでした。
しかし最近になって、私たちにとっては当たり前のことでも、業界にとって
いやいや、もっとグローバルに考えれば、地球環境にとって、すごく大切なことである
と認識を新たにしました。
私が感じたこと、勉強したこと、
皆様にも知っていただきたくてこのページを作ることにしました。
ご一読いただければ幸いです。
■ 私たちと 木や森の関係
グラフを見てください。
日本は、実に国土の7割が森林という、まさ に緑に覆われた美しい国なんです。
そして日本では、5~6万年前の旧石器時 代から縄文時代に至るまで、
人々は森の恵みを受けながら生活し、
木の文化を築いてきました。
そんな美しい森林を持つ日本
そんな森林、一見私たちの生活とは関係ないように思われますが、実は大ありなんです。
たとえば、空から降った雨は、山という巨大な貯水池にためられます。
その貯水池からゆっくりとしみ出してきた水、たとえば富士山の湧水などはとても有名ですが
これは、浄化されると共に、山のエキスをしっかりと持った水となります。
その水は、やがては集まって川となり里へ流れ、里を豊かにしてくれます。
そして、その水はやがては海へ。
上の図をご覧になってください。
日本の森林は、それ自体が豊かというだけではなく、その森林のエキスが、川に流れ込み里を豊かな土地に替え、
それは海までも豊かにする、ということが分かっています。
ですから今では、海で牡蠣を養殖している業者が山へ出かけ、植林の手伝いをしている
という事実ももあります。
一見全く関係のないように見える、山のこと、里のこと、海のこと
これらは全て有機的につながっており、私たちの生活の基盤を支えているんです。
■今、山がピンチ!
上の写真、どちらも 日本の森林の写真です。(同じ昼間の写真)
方や豊かな緑あふれる森の写真、方や荒廃した森の写真です。
実は、今日本の森林は左から右の写真のように変わってきているんです。
なぜでしょう??
戦後、我が国は復興等のため木材の需 要は急増し、極給が十分に追いつきま せんでした。
そこで政府は急速に植林を行う政策を とりました。
ところが木が生長し、木材として使え るようになるためには、少なくとも40 年程度の時間が必要です。
その間に、比較的安く、一度に大量に 入手できる外材が多く使われるように なりました
さらに、昭和30年の燃料革命(木から 石油へ)により薪炭材は燃料として適 さなくなり、国産材の需要はどんどん 落ち込んで行きました。
それを表したのが右のグラフです。
その後、国産材もいろいろな施策を行いましたが、安くて大量に入ってくる外材に押され需要がほと んど回復しないまま現在に至っています。
その結果
間伐を中心とした保育作業や伐採・搬出等にかかる費用も回収できず、林業はすっかり衰退してしまいました。
間伐をはじめとする森林の整備や手入れを行ったり、主伐(収穫のための伐採)を行っても採算が取れず
赤字になってしまうのです。
その結果が最初の写真・・・・・なんですね。
■こんな問題も・・・
山や森の抱える問題
実はそれ自体の問題以外にもこんな深刻な問題もあるんです。
◆◇地球温暖化◆◇
地球温暖化、今この言葉、ほとんどの方が聞いたことが あるのではないでしょうか。
地球温暖化(ちきゅうおんだんか)とは、
温室効果ガスが原因で起こる地球表面の大気や海洋 の 平均温度が長期的に上昇する現象である。
とあります。
この温暖化現象によって
・海面上昇による、国土の消失
・生態系の変化
・世界的な水不足や食糧危機
などが起こると言われています。
■温暖化のメカニズム
地球は太陽からの熱エネルギーによ って温められ、その一部を宇宙に放 射することで冷やされています。地 球の気温は、太陽から受ける熱エネ ルギーと地球が放出する熱エネルギ ーのバランスによって決まります。
その際に大きな役割を果たしているのは、 水蒸気の他に空気中に微量に含まれる二酸化炭素(CO2)やメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの「温室効果ガス」と呼ばれる気体です。
もしも、その温室効果ガスがなければ、地球の平衡温度はマイナス18℃程度にしか上がらず、とても生物が住めるような状態ではなくなるといわれています。
絵で言うと、左のような状態だと、太陽から頂く熱、逃げていく熱、それが本当にうまいことバランスして
まさにちょうどいい塩梅(あんばい)だと言えます。
しかしながら現代、この温室効果ガスの濃度が高くなりすぎ、絵で言うと、右のような状態になり、地球の温暖化がどんどん進行しています。
それは、産業革命以降、人類が化石燃料を使い続けたからに他なりません。
■今まさに山の出番
地球温暖化問題、詳しく述べると大変になるのでここでは本当にさわりの部分だけになるのですが
これを解決するためには、個人はもちろんのこと、グローバルにその対策を実施していかなければなりません。
そういう意味からいうと、昨年2015年 COP21 パリ協定において、各国が削減目標を自分自身で策定した
というのは大きなニュースでした。
ちなみに日本は、総合で26%、うち家庭部門では40%の削減目標を掲げています。
でもちょっとまってください。
では、地球温暖化問題が起きる以前、どうして地球はその環境を保てたのでしょう??
それは、地球には豊かな自然、そう大森林があったからなんです。
小学校の時習いましたよね
木は太陽の光を浴びて、Co2を吸って酸素を造り出す、ってこと
地球温暖化問題っていうと、何かと削減の話しか出てこないのですが
同時に大切なこと、それが森林を大切にする、ってことでなんです。
じゃあ、自然保護の観点から樹は1本も伐らない方がいい!!
なんて極論を論じるかたがいらっしゃいます。
でもそれは間違いなんです。
もう一度、前の写真を見てください。
きちんと整備された森林のものと、そうでないもの
一目瞭然ではないでしょうか。
それから、樹は総じて、若いもののほうが、老木よりも光合成が活発である
という研究結果もあります。
私たち日本人は、そんなことを知ってか、知らずか、山の樹を伐ったら必ず植林をして
山の、森林の循環をしていた、というのも事実です。
■ ではなぜ、近くの山なんでしょうか。
山や森林の大切さ、分かっていただけたでしょうか?
でもこれだけ見ると、森林を大切にしている山であればどこでもいいじゃないか、みたいな感じでしょうか?
でも、これをみてください。
このグラフは、木造住宅(38坪の住宅) の木材輸送過程のCo2排出量を表したも のです。
実は現在、日本で一番使われている木材、 それがホワイトウッドと呼ばれる物。
実はこれ、欧州、ヨーロッパも北欧から 運ばれてきた木材なんです。
これを使って家を建てると
Co2排出量に換算すると、国内住宅の 平均 の実に5.6倍、地域木材の13.7 倍もCO2を排 出したことになるんで す。
いかがでしょうか??
今2016年、国は施策としてZEH(ゼロエネルギー住宅)を強力に推し進めています。
結果、2020年度には新築世帯の半分はZEHにしようという目標も掲げています。
確かに、住宅の性能強化やソーラーを乗せることでZEHを実現し、環境に貢献する、というのもすばらしいことです。
しかし
こうやってみると、昔のように地域の樹で家を造る、と言う当たり前のことも、きちんとした環境貢献になる
ということも忘れないでいていただきたい、と思います。
そして、そしてもう一つ、忘れてはいけないこと
それは環境問題だけではなく、地域でいろんな物を循環させることによる地域の活性化
近くの山の樹で家を造る、近くの農産物を買う・・・・
そんなことで地域は活き活きとし、活力あるまちになっていきます。
それがあなたの住む町なんです。
そして最後に、樹の持つそれ自体のすばらしさ。
1.湿度を調節する(調湿機能)
2.ダニなど有害な動物への効果
3.断熱効果と蓄熱効果
4.床材としての安全性と快適性
5.木目の独特な色による、人の目への安全性とリラックス効果
などなど言い出せば数えきれません。
このことについては、弊社も所属する「美作木の家ネットワーク」を始め、いろいろな場で語られていますが
その性能をもっとも発揮するのが、その地で育った地域材である
ということも忘れないでいただきたい、と思います。